夢はあなただけのための試写室
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昔、夢は神のお告げや、偉大なる力からもたされた予言とされてきました。
例えば、ギリシアや東洋のさまざまな王が、他国へ出征するときに、夢占い師を連れていったそうです。
単に退屈しのぎやおもしろ半分に伴ったのではなく、運命の水先案内人としての役割を、果たさせるためだったのです。
もちろんいまでは、夢を神からのメッセージと思ったり、夢で見たことがそのまま実現すると考えたりする人はいないでしょう。
そのかわり、心理学や精神分析学の研究が進むにつれて、
夢は人間心理の深淵をのぞく扉であり、カギであることが分かってきました。
その祖とでもいうべき人が、オーストラリアの精神医学者、ジークムント・フロイトです。彼の登場以来、精神分析学はさまざまな臨床例をもとに、夢のメカニズム、その背後にある人間心理を分析し続け「夢とは何か」「そこから何を読みとることができるか」を研究し、解明してきました。
そして、夢を分析することで、その人の隠された核の部分がわかるようになってきたのです。
では、なぜ人は夢を見るのでしょうか?
最も大きな理由のひとつは、
現実では満たされない願望を、夢の世界で充足しようとしているということです。
単純な例では、おもちゃを買ってもらえなかった子供が、その夜、欲しかったおもちゃを買ってもらい、楽しく遊んでいる夢を見る。
片思いをしている少女が、夢の中では彼と仲良く話をしている…などです。
もっとも、夢はこのようにストレートに願望を充足させるものばかりできありません。
大人になって、複雑な人間関係や社会状況の中で生きている場合、願望をさまざまなイメージに転化し、形を変えて満たそうとすることが往々にしてあります。
まして、ストレスの多い現代社会では、子供の夢のように単純に理解できる、つまりストレートに割り切れる夢は少ないといっていいでしょう。
夢はやはりひとりひとりのオリジナルな物語なのです。
人によって願望が異なるように、夢もまた異なります。そして、その夢が伝えようとするところも、人によって違うわけです。
つまり夢は、
あなた自身からあなたへのメッセージ。
隠されたあなたが脚本を書き、監督し、主演する映画、そして観客はたったひとりのあなただけの映画ともいえるでしょう。
ここでは特に「単純に割り切れない夢」の奥底にあるものを、解明していきたいと思います。