眠りに忍び込んでくる"悪魔"
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人が夢でうなされるのは、悪魔がいたずらをしているからだ…。
日本人にはあまりなじみがない考え方ですが、西欧には、人の夢の中にこっそり入り込んで、悪さをしたり、人のエネルギーを奪う「悪魔」がいるという伝説があります。
ギリシア神話に出てくるエムプーサという悪魔は、男性の夢に入り込んで誘惑し、男の精気を吸い取って堕落させるエッチな悪魔。
顔や胴は、この世のものとは思えないほどの美しい女性ですが、片足はロバの蹄で、もう片方の足は真鍮の蹄。
背中にコウモリの羽根を背負っているという奇怪な姿です。
彼女の誘惑を避けるには、悪口雑言の限りをつくして罵ることだそうで、罵倒されたエムプーサは、無力になってしまうと言われています。
スラブ民族に伝わるキキーモラという家の精は、その家の主婦が働き者の場合は、家事を手伝ってくれる重宝な精霊。
ところが主婦がぐうたらの怠け者だと、夜中に子供をくすぐって、こわい夢を見せる悪魔に変わります。
ドイツで信じられていた悪魔アルプは、人や動物の姿に自由に変身するのが特徴。実体はけむくじゃらの魔女です。
人の夢に入り込んでいたずらをしたり、悪夢を見せたりすると考えられています。
淫夢を見せることで有名なインキュバスとサキュバスは、デンマークの悪魔です。
男の姿で女性を誘惑するのがインキュバスで、女性の姿をして男性を誘うのがサキュバス。いずれも美形なのが特徴です。
インキュバスはラテン語のincubo(上に寝る、のしかかる)が語源で、女性に快楽を与えてエネルギーを吸い取ったり、父親のわからない子供を妊娠させたりします。
もともとは、人間の女性に堕落させられた天使だという説もあります。
サキュバスは同じくラテン語のsuccubo(下に寝る)が語源。森の妖精だったといわれ、人間の男性から精気を吸い取ったり吸いとると、つぎにインキュバスと交わってエネルギーを分かち与えます。
他の国の悪魔や恐怖を与えるのに対し、インキュバス、サキュバスは快楽を与えて、しまいにはミイラのようにしてしまうというあたりがユニーク。
性の解放で有名なデンマークらしい悪魔といえるかもしれません。
悪魔を近づけないために、西欧で信じられているのは、五芒星といわれる星を、ドアやベッドに描くこと。
枕の下に、この星を書いた紙を入れておくだけでも、恐ろしい夢を避けられるのだそうです。